元気になるオルソペディック ブログ
椎間板内酵素注入療法 その2
ブログの管理人のアベルです。
新型コロナウィルスの影響が国内外、熊本でも現在でも継続しております。
Withコロナで共生しないといけないのでしょうか?落ち着いた日常を早く取り戻したいです。新型コロナウイルスの影響で、学会内などもweb開催になり、現地で聴講できないなど大きな変化を生じてます。少なくとも2,3か月に1回は東京や、大阪、北海道など学会や研究会に参加してましたが、今年度は1度も飛行機に乗ることがなく週末をすべて熊本で過ごす生活に変化しており、時代が変わったことを実感しております。
椎間板内酵素注入療法の方法は??
さて、椎間板内酵素注入療法について、ZOOMを用いてweb上で、発表する機会が2回ありましたので、この場でも報告したいと思います。
内容としては、当院での治療効果と椎間板内酵素注入療法の手技についての報告でした。
手技で重要な点は、
「椎間板内酵素注入療法では椎間板中央にヘルニコアを注入することが重要」と慶応大学の岡田先生が報告されております。
出典:Eijiro Okada et al.(2020)The effectiveness of chemonucleolysis with condoliase for treatment of painful lumbar disc herniation. JOS
当院では手術で使用しているCアーム(外科用レントゲン撮影装置)を用いて、全例で椎間板中央に注入することができております。
ヘルニコアを販売している科研製薬さんによると、当院以外では今年度、椎間板内酵素注入療法を行っている施設は1施設のみのようです。熊本県内ではほとんど普及していないようです。
椎間板内酵素注入療法の効果
当院での腰椎椎間板ヘルニアに対するヘルニコアの短期成績を報告しました。
腰椎椎間板ヘルニアは腰痛、下肢痛を呈する疾患ですので、痛みの評価をNRSで行って行ってます。NRSとは、痛みを0から10の11段階に分け、痛みが全くないのを0、考えられるなかで最悪の痛みを10として、痛みを点数で評価するものです。
ヘルニコアの対象としては、腰椎椎間板ヘルニアで腰痛、下肢痛を伴い、薬物療法ブロック注射など保存療法で改善しない症例を対象としています。
ヘルニコア注射前と注射後、1か月、3か月経過観察できた症例のNRSを提示します。
1か月以上の経過の患者さんが14名、3ヶ月以上経過の患者さんが8名います。
1か月の治療経過では、ヘルニコア注射前が腰痛6/10、下肢痛7/10NRSから施行後、1か月でNRS腰痛3/10、下肢痛4/10に軽減してます。3か月でNRSが腰痛7/10、下肢痛6/10から腰痛4/10、下肢痛2/10と改善していました!!
腰痛、下肢痛ともNRSが改善しており、有効な治療法でした。
手術まで検討していたこれらの患者さんで手術を要した症例は1例のみでした!!ヘルニコアがない時代ならこれらすべての症例が手術を要したと考えられますので、ヘルニコアの出現で腰椎椎間板ヘルニアに対する治療方針は劇的に変化しています。今までは、腰椎椎間板ヘルニアに対しては保存療法か手術の2つしか選択肢がありませんでした。椎間板内酵素注入療法はEpoch-makingな治療法で、保存療法、手術療法の間になる第三の治療法になるものと考えております。もちろん、有効率は70-80%ですので、すべての患者さんに効果があるものではありません。効果がない場合は残念ながら、手術を考えないといけません。
まだまだこれからです
椎間板内酵素注入療法は治験や学会での報告を見ても、有用な方法ですが、残念ながら熊本県内では普及しているといえません。普及しない要因を考察しました。
普及しない要因として、
- 脊椎を専門としない開業医の先生方に椎間板内酵素注入療法が知られていない!
- 患者さんも椎間板内酵素注入療法を知らない!
- 治療者側も手技に精通していない!
1.椎間板内酵素注入療法は脊椎外科の学会ではトピックス1つとしてセミナーや治療成績の発表はありますが、一般の整形外科医の先生たちが聴講する機会が少ないのではないかと思います。コロナ禍で勉強会や研究会での講演が減った影響もあり、聴講する機会が減っていると思います。実際に椎間板内酵素注入療法の適応ではないかとご紹介いただいた症例は現在2例しかありません。(しかも同一の病院からです。)科研製薬さんの営業活動と啓蒙活動に期待したいです。
2.TVやネットでたまに、椎間板内酵素注入療法を見る機会がありましたが、一般の人にはまだまだ認知が足りないと思います。このブログが少しでも椎間板内酵素注入療法に対する知識を得られる場所になれば幸いです。
3.MRI検査がない時代は脊髄造影検査(ミエログラフィー)や椎間板造影検査は診断や治療方針の決定に、なくてはならない手技でした。MRIをはじめとした画像機器の開発、画像診断の発達によって、脊髄造影検査をする機会はここ、20年で激減しました。侵襲のないMRI検査の発展は喜ばしいことですが、椎間板造影やブロックを行う機会は年に数回程度と施行する機会が激減しております。現在の、研修医の先生や若手の先生では脊髄造影検査や椎間板造影などをしたことない人も多いのではないかと思われます。整形外科医も椎間板穿刺に精通する必要性が以前以上に増してきてます。
腰椎椎間板ヘルニアで腰痛、下肢痛が改善しない患者さんは一度、専門医を受診して治療方針を主治医の先生と相談することをお勧めいたします。
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